毎年4月、映画館の主役になる劇場版『名探偵コナン』。「全部で何作あるの?」「どれから見ればいい?」「100億円を超えたのはどの作品から?」──その答えを、この記事1本で全部そろえます。
先に結論を置きます。劇場版『名探偵コナン』は、1997年の『時計じかけの摩天楼』から2026年の『ハイウェイの堕天使』まで、全29作です。興行収入の最高は2024年の『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の158.0億円。そして2023年の『黒鉄の魚影(サブマリン)』から2026年の最新作まで、4作連続で100億円を突破しています。
1作目の興行収入は11億円でした。29年で、1本あたりの稼ぎは10倍を超えています。どこでシリーズの形が変わったのか。一覧表のあとに時代ごとの流れを追い、最後に「なぜコナン映画だけが100億円に届いたのか」を、筆者の見立てとして言い切ります。
※本記事は、各作品の中心人物や舞台に触れます。犯人・トリックなど結末の核心には触れていません。
- まず押さえたい「29作」の数え方
- 【一覧表】劇場版名探偵コナン 全29作|公開年・中心人物・脚本・興行収入
- 第1期(第1〜7作・1997〜2003年)|こだま兼嗣監督が作った「型」
- 第2期(第8〜14作・2004〜2010年)|山本泰一郎監督と「舞台の大型化」
- 第3期(第15〜21作・2011〜2017年)|静野孔文監督と「アクション大作」化
- 第4期(第22〜29作・2018〜2026年)|監督リレーと「100億円時代」
- 最新作『ハイウェイの堕天使』(2026年)|4作連続100億円の作品
- 【えっ】2017年以降、脚本家は「2人が1年ごと」に交代している
- 筆者の見立て|コナン映画は「事件」ではなく「人の物語」を売るようになった時に100億円へ届いた
- ✨ 公式で楽しむなら
- まとめ
まず押さえたい「29作」の数え方
一覧に入る前に、数え方の前提をそろえます。ここを知らないと、「30作以上あるはず」「2020年の作品が見つからない」と迷います。
毎年4月公開・東宝配給の本編シリーズが「29作」
劇場版の本編シリーズは、1997年から毎年4月に公開され、配給はすべて東宝です。本記事で数える「全29作」は、この本編シリーズの本数です。
2020年だけ新作がない理由
第24作『緋色の弾丸』は、もともと2020年4月17日公開の予定でした。新型コロナウイルスの影響で公開が延期され、1年後の2021年4月16日に公開されています。1997年から続いてきた毎年の公開が途切れたのは、この1回だけです。そのため、第24作以降は「公開年=作品番号+1997年」の計算が1年ずれます。
番号の付かない「コナン映画」が2本ある
映画館で上映されたコナン作品には、本編シリーズの番号に含まれないものがあります。
- 『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』(2013年12月):モンキー・パンチ原作『ルパン三世』とのクロスオーバー作品。興行収入は42.6億円で、同じ年の本編『絶海の探偵』(36.3億円)を上回っています。
- 『名探偵コナン 緋色の不在証明(アリバイ)』(2021年2月):テレビシリーズの赤井一家のエピソードを再編集した特別編集版。『緋色の弾丸』公開の2か月前に上映され、興行収入は12.4億円です。
「コナン映画は全部で何本?」と聞かれた時、本編29作だけを数えるか、この2本を足して31本とするかで答えが割れるのはこのためです。
【一覧表】劇場版名探偵コナン 全29作|公開年・中心人物・脚本・興行収入
本編シリーズ全29作を、公開順にまとめました。タイトルは『名探偵コナン』に続く副題部分です。興行収入は、2002年と2009年以降の作品を日本映画製作者連盟の年間発表で照合しています(それ以外の年は公表値)。最新作は興行が続いているため、2026年6月7日時点の報道値です。
| 作 | 公開 | タイトル(『名探偵コナン』に続く部分) | 中心になる人物・題材 | 脚本 | 興行収入 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1997年 | 時計じかけの摩天楼 | 連続爆破事件・新一と蘭 | 古内一成 | 11.0億円 |
| 2 | 1998年 | 14番目の標的(ターゲット) | 毛利小五郎・妃英理 | 古内一成 | 18.5億円 |
| 3 | 1999年 | 世紀末の魔術師 | 怪盗キッド(劇場版初登場) | 古内一成 | 26.0億円 |
| 4 | 2000年 | 瞳の中の暗殺者 | 蘭の記憶喪失・警視庁の刑事たち | 古内一成 | 25.0億円 |
| 5 | 2001年 | 天国へのカウントダウン | 黒の組織(劇場版初の本格参戦) | 古内一成 | 29.0億円 |
| 6 | 2002年 | ベイカー街(ストリート)の亡霊 | 仮想世界の19世紀ロンドン | 野沢尚 | 34.0億円 |
| 7 | 2003年 | 迷宮の十字路(クロスロード) | 服部平次・京都 | 古内一成 | 32.0億円 |
| 8 | 2004年 | 銀翼の奇術師(マジシャン) | 怪盗キッド・旅客機 | 古内一成 | 28.0億円 |
| 9 | 2005年 | 水平線上の陰謀(ストラテジー) | 豪華客船・毛利小五郎 | 古内一成 | 21.5億円 |
| 10 | 2006年 | 探偵たちの鎮魂歌(レクイエム) | 10作記念・探偵たちの総出演 | 柏原寛司 | 30.3億円 |
| 11 | 2007年 | 紺碧の棺(ジョリー・ロジャー) | 女海賊伝説の島・蘭と園子 | 古内一成 | 25.3億円 |
| 12 | 2008年 | 戦慄の楽譜(フルスコア) | 絶対音感・音楽 | 古内一成 | 24.2億円 |
| 13 | 2009年 | 漆黒の追跡者(チェイサー) | 黒の組織・全国の警察 | 古内一成 | 35.0億円 |
| 14 | 2010年 | 天空の難破船(ロスト・シップ) | 怪盗キッド・飛行船 | 古内一成 | 32.0億円 |
| 15 | 2011年 | 沈黙の15分(クォーター) | 雪山の村とダム | 古内一成 | 31.5億円 |
| 16 | 2012年 | 11人目のストライカー | サッカー・Jリーグ | 古内一成 | 32.9億円 |
| 17 | 2013年 | 絶海の探偵(プライベート・アイ) | イージス艦・スパイ | 櫻井武晴 | 36.3億円 |
| 18 | 2014年 | 異次元の狙撃手(スナイパー) | 世良真純・沖矢昴 | 古内一成 | 41.1億円 |
| 19 | 2015年 | 業火の向日葵 | 怪盗キッド・ゴッホの「ひまわり」 | 櫻井武晴 | 44.8億円 |
| 20 | 2016年 | 純黒の悪夢(ナイトメア) | 黒の組織・安室透と赤井秀一 | 古内一成 | 63.3億円 |
| 21 | 2017年 | から紅の恋歌(ラブレター) | 服部平次と遠山和葉・百人一首 | 大倉崇裕 | 68.9億円 |
| 22 | 2018年 | ゼロの執行人 | 安室透・公安警察 | 櫻井武晴 | 91.8億円 |
| 23 | 2019年 | 紺青の拳(フィスト) | 京極真・怪盗キッド・シンガポール | 大倉崇裕 | 93.7億円 |
| 24 | 2021年 | 緋色の弾丸 | 赤井一家・真空超電導リニア | 櫻井武晴 | 76.5億円 |
| 25 | 2022年 | ハロウィンの花嫁 | 高木と佐藤の結婚式・警察学校組 | 大倉崇裕 | 97.8億円 |
| 26 | 2023年 | 黒鉄の魚影(サブマリン) | 灰原哀・黒の組織 | 櫻井武晴 | 138.8億円 |
| 27 | 2024年 | 100万ドルの五稜星(みちしるべ) | 服部平次・怪盗キッド・函館 | 大倉崇裕 | 158.0億円 |
| 28 | 2025年 | 隻眼の残像(フラッシュバック) | 長野県警・毛利小五郎 | 櫻井武晴 | 147.4億円 |
| 29 | 2026年 | ハイウェイの堕天使 | 萩原千速・横溝重悟・神奈川 | 大倉崇裕 | 130.3億円超(6/7時点) |
表を上から下へ眺めるだけで、2つの山が見えます。ひとつは2016年の『純黒の悪夢』で興収が44.8億円から63.3億円へ一気に跳ねた段差、もうひとつは2023年の『黒鉄の魚影』で初めて100億円を超えた段差です。ここからは、監督の交代を目印に、29作を4つの時代に分けて追います。
第1期(第1〜7作・1997〜2003年)|こだま兼嗣監督が作った「型」
最初の7作はすべて、こだま兼嗣監督の作品です。脚本は第6作を除いて古内一成。爆弾、タイムリミット、そして新一と蘭の関係。いまも続く劇場版の骨格は、この時代にすべて出そろっています。
- 第1作『時計じかけの摩天楼』(1997年):東京で起きる連続爆破事件。新一と蘭の約束の日に、事件が重なります。劇場版の「爆弾」と「恋」の組み合わせは、この1作目から始まっています。
- 第2作『14番目の標的(ターゲット)』(1998年):毛利小五郎の周囲の人物が、トランプの数字になぞらえて次々と狙われます。小五郎と妃英理の関係が大きく描かれる1作です。
- 第3作『世紀末の魔術師』(1999年):怪盗キッドが劇場版に初登場。ロマノフ王朝の秘宝「インペリアル・イースター・エッグ」をめぐる物語です。
- 第4作『瞳の中の暗殺者』(2000年):警視庁の刑事が狙われる事件の中で、蘭が記憶を失います。佐藤刑事と高木刑事ら、警察関係者の物語の比重が大きい作品です。
- 第5作『天国へのカウントダウン』(2001年):ジンとウォッカら黒の組織が、劇場版で初めて本格的に物語へ絡む作品。高層ツインタワーが舞台です。
- 第6作『ベイカー街(ストリート)の亡霊』(2002年):仮想体験ゲームの中の19世紀ロンドンで、切り裂きジャックの事件に挑みます。脚本は、この作品だけ脚本家・作家の野沢尚が手がけています。
- 第7作『迷宮の十字路(クロスロード)』(2003年):京都を舞台に、服部平次が主役級で活躍します。平次と遠山和葉の関係が大きく描かれる作品です。
第2期(第8〜14作・2004〜2010年)|山本泰一郎監督と「舞台の大型化」
第8作から第14作までは、山本泰一郎監督の7作です。旅客機、豪華客船、飛行船と、舞台そのものが大きく、動くものになっていきます。
- 第8作『銀翼の奇術師(マジシャン)』(2004年):怪盗キッドが再び登場し、旅客機が舞台になります。
- 第9作『水平線上の陰謀(ストラテジー)』(2005年):豪華客船を舞台にした事件。毛利小五郎の見せ場が用意された1作です。
- 第10作『探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』(2006年):10作記念作品。服部平次や怪盗キッドら、おなじみのキャラクターがそろって登場します。脚本は柏原寛司です。
- 第11作『紺碧の棺(ジョリー・ロジャー)』(2007年):女海賊の伝説が残る島で、宝探しと事件が重なります。蘭と園子が中心です。
- 第12作『戦慄の楽譜(フルスコア)』(2008年):音楽、とくに「絶対音感」が事件の鍵になる作品です。
- 第13作『漆黒の追跡者(チェイサー)』(2009年):黒の組織が再び大きく動き、全国の警察関係者が集まる中で事件が進みます。興行収入は35.0億円で、この時点のシリーズ最高を更新しました。
- 第14作『天空の難破船(ロスト・シップ)』(2010年):巨大飛行船を舞台に、怪盗キッドとテロ事件が交差します。
第3期(第15〜21作・2011〜2017年)|静野孔文監督と「アクション大作」化
第15作から第21作は、静野孔文監督の7作です。この時代にコナン映画は、推理劇に大規模なアクションを重ねる「大作」の顔を強めていきます。興行収入も30億円台から60億円台へ、倍近くまで伸びました。
- 第15作『沈黙の15分(クォーター)』(2011年):東京での爆破予告と、雪深い村のダムが結びつく作品です。
- 第16作『11人目のストライカー』(2012年):サッカーが題材。実在のJリーグ選手が本人役で声の出演をしています。
- 第17作『絶海の探偵(プライベート・アイ)』(2013年):海上自衛隊のイージス艦を舞台に、スパイ事件が進みます。脚本家・櫻井武晴が劇場版に初めて参加した作品です。
- 第18作『異次元の狙撃手(スナイパー)』(2014年):超長距離狙撃による事件。世良真純と沖矢昴が大きく関わります。興行収入が初めて40億円を超えました。
- 第19作『業火の向日葵』(2015年):ゴッホの名画「ひまわり」と怪盗キッドをめぐる作品です。
- 第20作『純黒の悪夢(ナイトメア)』(2016年):記憶を失った組織の女性をめぐり、黒の組織、安室透、赤井秀一がそろって動きます。興行収入は前年の44.8億円から63.3億円へ。シリーズの段差はここで生まれました。
- 第21作『から紅の恋歌(ラブレター)』(2017年):百人一首(競技かるた)が題材。服部平次と遠山和葉、そして大岡紅葉が登場します。脚本家・大倉崇裕の劇場版初参加作です。
第4期(第22〜29作・2018〜2026年)|監督リレーと「100億円時代」
第22作からは、1人の監督が7作続けて撮る形ではなくなり、作品ごとに監督が入れ替わります。興行収入は90億円台に乗り、2023年からは100億円超えが当たり前になりました。
- 第22作『ゼロの執行人』(2018年・立川譲監督):公安警察に所属する安室透が物語の中心。爆破事件の容疑で毛利小五郎が逮捕されるところから始まります。興行収入91.8億円。
- 第23作『紺青の拳(フィスト)』(2019年・永岡智佳監督):劇場版で初めて海外(シンガポール)が舞台。京極真と怪盗キッドが中心です。興行収入93.7億円。
- 第24作『緋色の弾丸』(2021年・永岡智佳監督):赤井秀一をはじめとする赤井一家が集結。世界的なスポーツの祭典と、真空超電導リニアが舞台です。1年の延期を経た公開で、興行収入は76.5億円でした。
- 第25作『ハロウィンの花嫁』(2022年・満仲勧監督):高木刑事と佐藤刑事の結婚式、ハロウィンの渋谷、そして安室透の警察学校時代の仲間たち。興行収入97.8億円で、100億円の目前まで迫りました。
- 第26作『黒鉄の魚影(サブマリン)』(2023年・立川譲監督):灰原哀と黒の組織が中心。海に浮かぶ最先端の施設が舞台です。興行収入138.8億円で、シリーズ初の100億円突破。
- 第27作『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』(2024年・永岡智佳監督):函館を舞台に、服部平次と怪盗キッドが並び立ちます。興行収入158.0億円はシリーズ最高です。
- 第28作『隻眼の残像(フラッシュバック)』(2025年・重原克也監督):長野県警の刑事たちと毛利小五郎が中心。雪山と天文台が舞台です。興行収入147.4億円。
- 第29作『ハイウェイの堕天使』(2026年・蓮井隆弘監督):最新作。詳しくは次の章で整理します。
第28作の舞台と見どころは→【関連記事】映画「名探偵コナン・隻眼の残像」を観る前に知っておきたいことで、シリーズ最高興収の第27作は→【関連記事】『100万ドルの五稜星』を楽しむための公式視聴・読書ガイドで詳しく扱っています。
最新作『ハイウェイの堕天使』(2026年)|4作連続100億円の作品
第29作『ハイウェイの堕天使』は、2026年4月10日に公開されました。監督は蓮井隆弘、脚本は大倉崇裕です。
中心は「風の女神」萩原千速
物語の中心は、神奈川県警交通機動隊の白バイ隊員・萩原千速です。コナンたちは、世良真純とともに横浜・みなとみらいで開かれるバイクの祭典へ向かう途中、暴走する謎の黒いバイクに出会います。その車体が最新技術を積んだ白バイ「エンジェル」によく似ていることから、黒いバイクは「ルシファー」と呼ばれ、神奈川県警と警視庁の追跡が始まります。神奈川県警の横溝重悟も物語に関わります。
シリーズ歴代No.1のスタート
公開から3日間で観客動員231万人・興行収入35億円を記録し、シリーズ歴代No.1のスタートを切りました。2026年6月7日時点で興行収入130.3億円・観客動員883万人を突破し、『黒鉄の魚影』『100万ドルの五稜星』『隻眼の残像』に続いて、4作連続の100億円超えを達成しています。
Blu-ray&DVDは2026年11月25日発売
『ハイウェイの堕天使』のBlu-ray&DVDは、2026年11月25日に発売されます。豪華盤と通常盤、それぞれBlu-rayとDVDの4形態です。映画館で見逃した人が自宅で最新作に追いつけるのは、この日からです。
第30作は2027年
『ハイウェイの堕天使』の本編終了後には、2027年公開の第30作の予告映像が流れました。ロンドンの風景が映る予告で、ファンの間では舞台予想が盛り上がっています。本記事を書いている2026年9月下旬の時点で、正式タイトルはまだ発表されていません。
【えっ】2017年以降、脚本家は「2人が1年ごと」に交代している
一覧表の「脚本」の列を、2017年から順に読んでみてください。
- 2017年『から紅の恋歌』:大倉崇裕
- 2018年『ゼロの執行人』:櫻井武晴
- 2019年『紺青の拳』:大倉崇裕
- 2021年『緋色の弾丸』:櫻井武晴
- 2022年『ハロウィンの花嫁』:大倉崇裕
- 2023年『黒鉄の魚影』:櫻井武晴
- 2024年『100万ドルの五稜星』:大倉崇裕
- 2025年『隻眼の残像』:櫻井武晴
- 2026年『ハイウェイの堕天使』:大倉崇裕
第21作から第29作までの9作は、大倉崇裕と櫻井武晴が1作ずつ交互に書いています。一度も順番が崩れていません。
しかも、2人が書く作品の顔ぶれには、はっきりした色の違いがあります。
| 脚本家 | 2017年以降の担当作 | 中心にいる人物 |
|---|---|---|
| 大倉崇裕 | から紅の恋歌/紺青の拳/ハロウィンの花嫁/100万ドルの五稜星/ハイウェイの堕天使 | 平次と和葉、京極と園子、高木と佐藤、萩原千速など「誰かと誰かの関係」 |
| 櫻井武晴 | ゼロの執行人/緋色の弾丸/黒鉄の魚影/隻眼の残像 | 公安警察、FBIの赤井一家、黒の組織、長野県警など「組織の中の人間」 |
大倉作品は恋と人間関係、櫻井作品は組織と国家。観客の側から見ると、毎年「違う味」のコナン映画が交互に届いていることになります。興行収入の上位3作(158.0億円の五稜星・147.4億円の隻眼・138.8億円の黒鉄)にも、2人の作品が入り混じっています。
もう1つ、数字で見る事実があります。第1作から第20作までの20作のうち、16作の脚本は古内一成です。劇場版の基礎を20年近く支えた脚本家と、そのあとを交互に引き継いだ2人。脚本の列には、シリーズの歴史がそのまま刻まれています。
筆者の見立て|コナン映画は「事件」ではなく「人の物語」を売るようになった時に100億円へ届いた
筆者は、劇場版コナンが100億円に届いた理由をこう読みます。観客が映画館に買いに行くものが、「その年の事件」から「そのキャラクターの物語」へ入れ替わったからです。推理の出来ではなく、誰の物語を描くかが、興行収入の桁を決めています。
根拠は一覧表の数字にあります。第1作から第19作まで、興行収入は上下を繰り返しながら11億円から44.8億円まで伸びてきました。舞台は摩天楼、客船、飛行船、ダムと入れ替わっても、前作との差はほとんどが数億円の幅に収まっています。その流れが途切れたのが第20作『純黒の悪夢』です。前作から18.5億円増え、一気に60億円台に乗りました。この作品は、安室透と赤井秀一という2人の人気キャラクターが、同じ観覧車の上で拳を交えるシーンを軸にしています。事件の舞台ではなく、「あの2人が同じ画面で戦う」こと自体が観客を呼びました。
次の段差も同じ形をしています。第22作『ゼロの執行人』は、安室透1人を物語の中心に置いて91.8億円。第26作『黒鉄の魚影』は、灰原哀の正体と黒の組織の距離を描いて、シリーズで初めて100億円を超えました。第27作『100万ドルの五稜星』は、服部平次が和葉へ想いを伝えようとする物語と怪盗キッドを重ねて158.0億円。数字が跳ねた作品は、例外なく「特定のキャラクターの人生の大事な1日」を描いています。
そして最新作『ハイウェイの堕天使』が、この読みを最も強く裏付けます。物語の中心に立ったのは、江戸川コナンでも怪盗キッドでもなく、神奈川県警の白バイ隊員・萩原千速です。レギュラーの主役級とは言えない人物を真ん中に置いても、公開3日間はシリーズ歴代No.1、興収は130億円を超えました。観客が信頼しているのは、もはや特定の人気キャラクターではありません。「コナン映画は、毎年だれか1人の物語を本気で描く」という形式そのものを信頼して、映画館へ足を運んでいます。
だから筆者は、第30作もこの形式の上で勝負すると読みます。予告に映ったのはロンドンの風景でした。30作目という節目に、この形式で描かれる「だれか1人」が江戸川コナン、つまり工藤新一自身になった時、劇場版コナンは158.0億円の最高記録を塗り替えます。あなたは、第30作で本気の物語を描いてほしいのはだれですか。
✨ 公式で楽しむなら
劇場版コナンは、テレビシリーズと原作で積み上げた人間関係を知っているほど、1本ごとの重みが増します。どの作品から見返すか迷ったら、一覧表の「中心になる人物・題材」の列で、好きなキャラクターの作品から選ぶのが近道です。
公式の配信や単行本・パッケージで作品を楽しむことは、次の劇場版を生み出すための何よりの応援です。お金で時間は買えます。公式にお金を払うことは、次の1本を高い品質で受け取るための、クリエイターへの最短の投資です。
Amazon Prime Video
アニメ『名探偵コナン』は Prime Video で配信されています。劇場版に登場する人物の関係は、テレビシリーズで積み上げられたものです。映画の前後で関連エピソードを見返すと、クライマックスの一言の重さが変わります。劇場版各作品の配信状況は時期によって変わるため、ページでご確認ください。
Amazon Prime Video で『名探偵コナン』をチェックする
最新作のBlu-ray&DVDと見放題サービス
最新作『ハイウェイの堕天使』は、2026年11月25日発売のBlu-ray&DVDで自宅でも見られるようになります。過去作をまとめて見るなら、U-NEXT、dアニメストア、DMM TVなどの見放題サービスも候補です。配信状況・料金は変わることがあるため、各サービスでご確認ください。
劇場版で何度も物語を動かしてきた組織については→【関連記事】黒の組織メンバー全一覧|コードネームの法則と正体判明の経緯で、原作に残る謎は→【関連記事】連載30周年 それでも残る最大の謎BEST5で整理しています。
まとめ
劇場版『名探偵コナン』の本編シリーズは、2026年の『ハイウェイの堕天使』までで全29作です。
- 全29作:1997年『時計じかけの摩天楼』から毎年4月に公開。2020年だけは『緋色の弾丸』の1年延期で新作なし。
- 番号外の2本:『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』(2013年)と特別編集版『緋色の不在証明』(2021年)。
- シリーズ最高興収:第27作『100万ドルの五稜星』の158.0億円。
- 100億円超え:第26作『黒鉄の魚影』から第29作『ハイウェイの堕天使』まで4作連続。
- 段差の起点:第20作『純黒の悪夢』で44.8億円から63.3億円へ。
- 脚本の交代:第21作以降の9作は、大倉崇裕と櫻井武晴が1作ずつ交互に担当。
- 次回作:第30作は2027年公開。正式タイトルは2026年9月下旬時点で未発表。
29本を公開順に並べると、事件の映画だった劇場版が、人の物語の映画へ変わっていく流れがはっきり見えます。次に見返す1本は、好きなキャラクターの「人生の大事な1日」を描いた作品から選んでみてください。あなたの「コナン映画ベスト1」は、どの作品ですか。

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