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2014年07月03日(木) 
第三十話「ゆいまーるとあらたかの島」

琉球女性史の研究者・山城彰子のガイドで、前日は沖縄の歴史と文化にどっぷり浸ることができた妃佐子とさと子は、一日ですっかり「琉球」のとりこになっていた。泰子とともに、奇跡の1マイルと呼ばれる「国際通り」を散策したときも、お土産品はそっちのけで漆器や陶器などの伝統工芸品を興味深く見入っていた。国際通りの西端にあるショッピングモール「パレットくもじ」4Fの「那覇市歴史博物館」では、さまざまな紅型衣装や貴重な歴史資料、国宝・琉球国王「王冠」を前に、閉館の音楽が流れている中、動くことも忘れているかのようだった。

翌朝、妃佐子とさと子は色違いのかりゆしウェアでホテルの朝食会場に現れた。ふたりとも気分は完璧に沖縄人。昨日の楽しい観光の話題で盛り上がっていると、あっと言う間に出発時間が近づいていた。三人はホテルのそばにある美栄橋駅から沖縄都市モノレール「ゆいレール」で那覇空港に向かった。ゆいレールの「ゆい」は、沖縄の人と人のつながりや支え合いを意味する言葉で、沖縄では「ゆいまーる(ゆいが廻る)」という相互扶助の「講」のシステムが古来から根付いている。

那覇から宮古島へは、他社便の通常料金の半額から1/3という安さで、スカイマークが毎日往復4便就航している。航空路線が整備されてない頃は、離島との行き来は船舶しか手段がなく、所要時間も長く離島間交流の敷居は非常に高かったが、最近になって大きな離島では、石垣島の事例のように新しい滑走路が整備され、本土との直行便も就航している。しかし、「最後の離島・おくなわ(沖縄の奥という意味)」と呼ばれる粟国島、渡名喜島、北大東島、南大東島、多良間島の5島をはじめ、距離的な課題を抱えている離島は少なくない。

那覇空港を10時に離陸したSKY541便は、水平飛行に入るとほどなく着陸態勢に入る。船舶なら10時間近くかかる距離をわずか50分で結んでくれる。飛行機が徐々に高度を下げるに従い、泰子が目に見えて言葉少なくなってきた。政夫と二人三脚でレストランを開業して5年間、宮古島の両親のことを振り返る余裕もなく夫婦で一所懸命に頑張ってきた。子どもたちが成長して帰省もできなくなったこともあり、ほぼ10年ぶりのふるさとの島だ。年老いた両親のことを思うと、ついつい目頭が熱くなる泰子だった。

こじんまりとした宮古空港ターミナルビルの到着ロビーで三人を待ちかねていたのは、泰子の高校同級生・池間早苗(47)だった。「やすりん、元気だった~♪。10年ぶりだよね~、おいこら太ったんじゃない!」。「さなえにだけは言われたくないわよ~!」。ふたりは一瞬で女子高生にもどり、そのパワーに妃佐子とさと子は一歩下がるほどだった。久々の再会をシーサーの大きなモニュメントが見下ろす。「さなえ~、このシーサーは前にはなかったと思うけど~」と泰子が訊ねると「あなた、10年もたつと島もいろいろ変わってるわよ。このシーサーは、東京から池間島に移ってきた造形美術家・牛山りこさんが2年以上かけておととし完成したの」。牛山の名前は、宮古島の自然に魅せられて本土から移住してきた人たちの中のひとりとして泰子の記憶にもあった。

琉球漆喰と琉球赤瓦、宮古島で採れた巨大なシャコ貝や立派なホラ貝、タカラ貝、スイジ貝、クモ貝、サザエなどを使って作られたシーサーは、台座を含めると2m以上もある。空港ロビーの中では最も目立つ存在だ。材料の貝殻はたくさんの市民や旅行者から無償で提供されたもので、その名は「あたらかシーサー」。宮古方言で「大切な」とか「もったいない」という意味から命名されている。「おかあさん『あらたか~』って優しい言葉ね」とさと子が泰子につぶやくと、「宮古の方言って、とてもおだやかでやさしい言葉がいっぱいあるのよ」と答えた。池間の車に乗り込んだ三人は、しばし泰子の「宮古言葉教室」を受けながら、東洋一の白い砂浜で有名な「与那覇前浜ビーチ」に向かった。

空港からわずか20分にあるこのビーチは、有名な「全日本トライアスロン宮古島大会」のスイムでスタートとゴール地点になっているので本土でも知名度が高い。沖には「来間(くりま)島」を目の当たりにし、きめ細かくてサラサラの砂浜が7キロにわたって海岸沿いに続いている。本土にあれば海水浴の時期は芋の子を洗う混雑になるに違いないが、ここは人が少ないのでゆったりと過ごすことができる。

与那覇前浜ビーチから車で10分、全長160メートルの来間大橋を渡ると、宮古島の全景が180度パノラマで広がるビューポイント「竜宮展望台」がある。宮古島はそのほとんど平地なので、高台から壮大な景色が一望できるこの場所は、絶好の観光スポットになっている。宮古島には時計回りに北から「池間島」「大神島」「来間島」「多良間島」「下地島」「伊良部島」の6つの離島があるが、「池間」「来間」「伊良部(予定)」には、長くて美しい橋梁で陸続きになっている。

「紫の上さん、ジェラートたべませんか?」。さと子がめざとくみつけたのが竜宮展望台近くにあるカフェ「楽園の果実」。自家製のジェラートがお薦めの店だが、池間はいまにも店に掛けだそうという二人を制して「気持ちはわかるけど、もうすこしだれ我慢してね。宮古で一番のジェラートを食べに行きましょう」。地元の泰子には、池間の考えが透けて見えていた。地元の本当の価値ある情報はなかなか観光ガイドでは入手てきないものなのだ。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数1,398 カテゴリ日記 コメント1 投稿日時2014/07/03 07:13
公開範囲外部公開
コメント(1)
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  • 2014/07/03 11:14
    「来間大橋」の全長は、なんと1690メートルもありました。大橋です♪♪♪
    謹んでお詫びします
    次項有
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