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2014年06月26日(木) 
第二十四話「クーポンとハサミは使いよう♪」

「え~、またオリーブオイル!まるで、もこみちやん♪」。集まった主婦の中ではもっとも年長の大宮慶子(62)が素っ頓狂な声をあげた。「速見もこみちくんは、自分が好きなだけでオリーブオイルを多用しているんではないんです。オリーブオイルにはさまざまな栄養価が含まれていて、主成分のオレイン酸にはコレステロールを下げる作用があって、動脈硬化や心筋梗塞の予防、便秘解消などに効果的なんですよ。合成サラダ油より少し高くなりますが、身体のことを考えるとこれを使わない手はありません」とオーナーシェフの宮越信(44)が応えると、大宮の隣でデザートのシフォンケーキの卵黄生地にオリーブオイルをたっぷりかけていた三村晴美(52)が「マコトさん、トリビア♪」と嬉しそうに合いの手を入れた。

ここは、宮越が三十代半ばでオープンしたイタリアンレストラン「リーノ」。当時は中心街にイタリアンのレストランはなく、城下町の古い気質もあっていろいろ苦労も多かったが、いまではファミリーから若いカップル、年配客まで幅広い世代が食事を楽しめる数少ない人気の洋食店になっている。「マコトさん♪」と気軽に誰もが声をかけられるマコトの柔和な性格や、DIYからバラづくりまでなんでもこなしてしまう器用さ、そして持ち前のリーダーシップが手伝って、リーノは自然に地元のキーパーソンたちが集まる場になっていた。

お城のすぐ側で伝統の繊維業を家業とする宮越家に生まれたマコトは、少年時代に腕を磨いたスキーが動機づけとなって、そのメッカである長野県白馬村で暮らすことを夢見ていた。「料理人になれば大好きな白馬村のペンションやホテルで働ける」と考えたマコトは、高校を卒業すると生まれ育った町を離れて、10年間にわたり軽井沢や白馬のホテルで働いた。しかし、故郷への思いは断ちがたく、信州で培った料理を生まれた家でお世話になった方々に食べてもらいたいと考え、生家にリターンしたのである。

一度外に出てみたことで、改めて地元の素晴らしさにマコトは気づいた。レストランもなんとか軌道に乗りかけてきた頃、行政が「小中学校の学校給食を民間委託にする」という計画を知り、安心安全な地産地消の食材を子どもたちに提供してもらいたいと各所への陳情などに関わった。可能な限り地元の食材を取り入れた給食を提供してほしいが、民間委託や大規模な給食センターではそれは不可能。マコトたちは時間をかけて行政や地域そして家庭にまで学校給食の問題を浸透させた。「体ができあがる12歳までは健康的な食事を摂らせなくては」という願いは、中学校はセンター方式、全小学校は自校式給食で統一されて実現した。この活動を契機にマコトは、地元の誰もが信頼するキーパーソンのひとりとなったのである。

リーノの課題は、近所の人しか通らないような裏通りに店を構えているというロケーションにあった。いわば「知る人ぞ知る」名店だったのである。その中で、自分の家でみんなと食事をする延長線上にあるイメージと、宣伝色を全面に出さず人柄と腕で勝負してきたマコトの店づくりは、地元の人たちに共感され多くのリピーターが育っていた。しかし、消費税増税においてもメニューの価格を上げずに頑張るなどというお客様志向の経営を継続・発展するには、更なる効率的な集客が必要とされていた。

リーノのメニューは、シェ・マエサトと比較するとやや気軽でリーズナブルな価格帯だった。マコトは一品料理を組み合わせて4,000円程度のコースを設定し、これをディナークーポンとして3,000円で発売した。クーポンを購入した人のリストを見ると、いつもの常連さんたちが半分近くを占めていたが、顧客管理などできていなかったので、お知らせを送付するための連絡先としてのメールアドレスが把握できるのはありがたかった。1日3組平日限定のクーポンは好評で、予約に余裕がありそうな日は余分に受けつけることもできた。常連さんが連れてきてくれたお客さんがその後リピートしてくれたり、ドリンクの売り上げにも貢献してくれた。

これだけではなく、マコトはオーナーシェフ仲間に声をかけて、もうひとつ面白いクーポンの利用を政夫と一緒に考えていた。
『有名店オーナーシェフが指導。楽しく美味しくみんなでイタリアンやフレンチ料理の奥義をゲットしよう。オリエンテーション(1回)、レストランで調理実習と昼食会(平日4回)、ご家族も呼んでフルコース料理とディナーの大お食事会(コミセン1回)。必ず全日程参加できる人。素材は地元にこだわり、メイン以外は持ち寄りで。毎回、伝統野菜による復刻料理にも挑戦。最終的にはフルコースをマスター。主婦大歓迎、主夫熱烈大歓迎!。1名12,000円、10人限定』。この内容でクーポンを出したところ、地元新聞記者の土生が「地域を歩く」という連載企画に掲載したことで、あっと言う間に売り切れた。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数1,024 カテゴリ日記 コメント1 投稿日時2014/06/26 04:53
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