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ぶらりふるさと地名考「宍粟」
2019年02月28日 21:49

ぶらりふるさと地名考「宍粟」

 

宍粟は肉や穀物の豊かな地


 宍粟という地名は、『播磨国風土記』(奈良時代前期)にこの地名が登場します。風土記成立時すでに長老の言い伝えとなり、イワノオオカミとアメノヒボコの二神によるユーモラスな土地の争奪戦によって地名が生まれていったことが記されています。ちなみに宍(肉の異体字)は、動物の肉、粟(禾)は、穀物を表し、狩猟と農耕の盛んな地で肉や穀物の豊かさを二字で表現したと考えられます。
 宍粟の表記は、風土記には「宍禾郡」とあり、しさわのこおりと読みます。飛鳥池遺跡や平城宮跡で発見された木簡には「宍禾郡」と「宍粟郡」の二つの表記があります。その後「宍禾」が「宍粟」に統一され、 読みが「しさわ」から「しそう」と変化していったようです。

 

 ※木簡は、地方から朝廷への税として運ばれた物産の荷札に使われた。


 天正年間(1573~1593)羽柴秀吉が播磨を制圧し手柄を立てた家臣宛ての感状や知行状には完粟郡と書かれています。その表記は江戸時代にも引き継がれます。
 今から40年前、初めて手にした山崎町史(昭和52年発行)の冒頭のカラー頁に「完粟山崎之絵図」とあり、思わず誤植かと思ったことを今も覚えています。

 

県外にある二つの宍粟


 一つは、岡山県で偶然見つけたのが宍粟の標識。それは総社市北部、高梁川の中流東岸にある小さな集落です。この地区は宍粟の古名と同じ「しさわ」と呼んでいます。これは単なる偶然の一致ではなく、古代播磨国から吉備国へ何らかの目的のための職業的集団移動があったと推測しています。
  もう一つは、北海道に宍粟という地名が残されています。明治27年(1894)蝦夷地と呼ばれた北海道石狩平野の篠津原野に開拓団として骨を埋めた宍粟郡出身の人たちの足跡です。

 

合併に伴う市名改正の問題点


 平成の大合併に伴う市名変更に「何、それ」と思うような市名の出現が目につきました。市名のイメージアップをねらうあまり、隣の市町に迷惑をかけたケースもありました。今思うに、市名を一部の人で決めるのは論外ですが、民主主義だといって公募で決めるのは必ずしもいいとは言えません。市名変更に関しては、国が指針を設けることや有識者が幾つか提案し、その理由を示したうえで、住民がそれを参考にして選ぶという方法もあったと思います。少なくとも今を生きる住民は、伝統的地名をおろそかに扱うことなく、後世に伝えていく責任があります。
 さいわい、宍粟市は宍粟郡を継承してよかったと思います。ただ歴史的観点から言えば、宍粟郡の七つの里(御方里・みかたのさと、雲箇里・うるかのさと、柏野里・かしわのさと、高家里・たかやのさと、石作里・いしつくりのさと、比地里・ひじのさと、安師里・あなしのさと)の安師里の大部分を占める安富町が姫路市に合併したため、宍粟郡五町の完全合併に至らなかったことが悔やまれます。

 

 

 『安富町史 通史編』より(一部修正を加える)


地名は成り立ちを知る「小さな文化財」


 宍粟市は、「日本の珍名」(竹内正浩著)において難読地名の西の横綱に選ばれたことで話題になりました。
 読めない、書けない、どこにあるかわからないと揶揄(やゆ)された宍粟市ですが、春の千年フジや秋の最上山もみじまつりには年々多くの観光客が訪れ、宍粟市が広く知れ渡っていることを嬉しく思っています。同時に初めて訪れる人のほとんどが最上山を「もがみやま」と読みます。展望台の下にあるお寺の正式名は最上稲荷経王院(さいじょういなりきょうおういん)で岡山県の最上稲荷の遥拝所でもあり、地域住民はお寺のある山を親しみ込めていつの頃からか「さいじょうさん」と呼んでいます。
 宍粟の読みや表記の変遷も歴史です。地名は風土の一片として地域の成り立ちを知る有力な手掛かりになります。それゆえ「地名は小さな文化財」といわれるのです。歴史の重みのある宍粟にはたくさんの有形・無形の文化財があることを知って世に伝えていきたいものです。

 

参考:日本地名大辞典(兵庫・岡山・北海道)、「石狩平野 篠津原野への挑戦」、安富町史、「もうひとつの宍粟 岡山県総社市」(web)

 お知らせ:山崎郷土研究会の諸先輩たちが執筆協力した日本地名大辞典(角川書店)と日本歴史地名辞典(平凡社)を元に平成21年に「しそうの地名(ゆらい)」と題してしそうSNSで紹介しています。平成31年1月現在アクセス総数41万件と多くの方に見て頂いています。ぜひ一度アクセスしてみてください。

 

※山崎郷土会報No.132 平成31年2月23日発行より転載(図カラー化)

 

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